現代社会では、過度な仕事量や不規則な勤務体系によって疲労に悩まされている方が数多く存在します。しかしながら、「ただ休むだけ」で果たして十分に疲れを癒すことができるのでしょうか。本稿では、疲労回復に関する最新の研究成果をもとに、疲労の原因や効果的な対策を整理しながら、働く人々が日常的に抱える問題を解消するための実践的な方法をご提案します。

この記事は以下の方におすすめです。
・疲労を感じても十分に回復できていないと感じる方
・職場での集中力や生産性の低下を自覚している方
・疲労による心身の健康不安を抱えている方
疲労回復の鍵は「心理的切り離し」と「コントロール」
疲労回復の要となるのは、「仕事から完全に頭を切り離す心理的切り離し」と、「自分自身で回復手段を選び実践するコントロール」の2つです。これらを意識して日々の生活に取り入れることで、たとえ仕事の要求水準が高かったり不規則なシフト勤務であっても、良好な健康状態と幸福感を維持することが可能になります。
疲労回復が必要な背景と影響
1. 疲労回復の必要性
仕事の特性や労働環境は、疲労回復の度合いに大きく影響を及ぼします。特に「高い仕事の要求」と「低い仕事のコントロール感」は、疲労回復を阻害し、幸福感の低下を招く要因となることが指摘されています(Sonnentag & Zijlstra, 2006)。
2. 回復体験と健康への影響
「心理的切り離し」「リラクゼーション」「マスタリー(新しいスキルの習得)」「コントロール」など、さまざまな回復体験は疲労軽減や活力向上にそれぞれ異なる効能を持つとされています(Bennett et al., 2018)。特に、仕事から意識を完全に切り離す「心理的切り離し」は、疲労回復において重要な役割を果たします。
3. シフトワークの影響
夜勤や不規則なシフト勤務は、体内リズムの乱れによって疲労回復を難しくします。シフト制で働く看護師を対象とした調査では、若い世代ほど十分なサポートを必要としているという報告もあり(Winwood et al., 2006)、シフトワーク特有の対策が求められています。また夜勤やシフト勤務が無くても、業務対応により22時以降の勤務が必要な場合も体内リズムの乱れにつながります。
どのように回復体験を得るべきか
1. 心理的切り離しの実践
休日に仕事のことを一切考えずに過ごす時間を確保することで、ストレスを軽減できます。たとえば、勤務後に趣味の映画鑑賞やウォーキングなどの軽い運動を取り入れると効果的です。
2. リラクゼーション
スウェーデン式マッサージやスポーツマッサージは、疲労回復に高い効果が期待されています(Ayudi, 2022)。特にスポーツマッサージは疲労軽減の度合いが大きいとの報告もあり、身体を使う仕事をしている方におすすめです。
3. マスタリーの取り入れ
新たなスキルを習得することによって得られる達成感は、精神的ストレスを和らげ、疲労感を軽減します。具体的には、楽器の演奏を学んだり、新しいレシピに挑戦したりすることで、前向きな気持ちを育むことができます。私はウォーキングや読書を意識的に行っています。
疲労回復を妨げる要因の克服
1. 回復を妨げる要因の克服
• 高い仕事の要求: スケジュールを再検討し、十分な休憩を計画的に取り入れる。
• 低いコントロール感: 自分が主体的に選んだ方法でリフレッシュできる時間を意識的に確保する。
2. シフトワークへの対応
• 夜勤の場合: できるだけ明るい照明を活用し、身体のリズムを調整する。
• 勤務後: 暗い環境でリラクゼーションを行い、質の高い睡眠を促進する。
実践できる回復法
1. 心理的切り離しのためのルーチン
勤務終了後は携帯電話やパソコンの電源を完全にオフにする「デジタルデトックス」を取り入れる。
2. マッサージや軽運動
マッサージの予約を週1回程度取り入れ、さらにヨガやストレッチを日々の習慣とする。
3. 計画的な休養
休日には自然豊かな場所へ足を運び、身体と心の両面でリフレッシュを図る。
私の考え
疲労を自覚し、早めに対策を講じる予防的アプローチは極めて重要だと感じています。私自身、疲労が蓄積すると思考のまとまりが悪くなり、集中力も低下します。そうしたサインに気づいた際には、10分ほど深呼吸をしたり、オフィスの周りを短時間散歩したりして、気分をリセットするよう心がけています。
まとめ
疲労回復は、単に「休息を取る」だけで完結するものではありません。心理的切り離しや、個々人が主体的に選んだ回復方法を取り入れることで、より効果的かつ持続的なリフレッシュが期待できます。忙しい日常の中でも、これらの方法をぜひ試してみてください。疲労を正しく理解し、早期に適切な対策を講じることで、より豊かで充実した毎日を送れるはずです。
参考文献
• Jansen, N., Kant, I., & Brandt, P. (2002). Need for recovery in the working population: Description and associations with fatigue and psychological distress. International Journal of Behavioral Medicine, 9, 322–340.
• Sonnentag, S., & Zijlstra, F. (2006). Job characteristics and off-job activities as predictors of need for recovery, well-being, and fatigue. The Journal of Applied Psychology, 91, 330–350.
• Bennett, A., Bakker, A., & Field, J. (2018). Recovery from work-related effort: A meta-analysis. Journal of Organizational Behavior, 39, 262–275.
• Winwood, P., Winefield, A., & Lushington, K. (2006). Work-related fatigue and recovery. Journal of Advanced Nursing, 56, 438–449.
• Ayudi, A. (2022). The Effect of Swedish massage And Sport Massage on the Recovery of Fatigue on Labor Workers or Collectors. International Journal of Multidisciplinary Research and Analysis.