2025年1月17日に厚生労働省が公表した「今後の労働安全衛生対策に関する報告」では、特に中小規模事業場での健康障害予防対策の強化が強調されています。本記事では、当該資料の要点とともに、国の取り組みがもたらす影響や運用上の課題を整理し、さらに産業衛生専門家としての視点を踏まえた具体的な対策案を提案します。

この記事は以下の方におすすめです。
・人事・総務部門の担当者や安全衛生委員会のメンバー
・メンタルヘルスや化学物質管理などに関心を持つ実務担当者
・中小規模事業場の経営者・管理職
中小規模事業場における健康障害予防対策の背景
労働災害や健康障害の予防は大企業だけでなく、中小規模事業場においても年々重要性を増しています。近年注目を集めているのは、メンタルヘルス不調の増加や化学物質管理の厳格化、高年齢労働者の増加に伴うリスク対策など、多岐にわたります。厚生労働省は、こうした背景を受けて労働安全衛生法の改正や新たな指針の策定を進め、中小規模事業場にもより包括的な健康障害予防対策を求める方針を強化しています。
資料の要点
1. 個人事業者への安全衛生措置の義務化
従来は労働者のみを対象としてきた安全衛生措置が、中小規模事業主や個人事業者にも適用されるようになりました。たとえば、危険作業における特別教育や安全管理措置など、従来は“努力義務”に近かった取り組みが、正式に義務づけられています。
2. 職場のメンタルヘルス対策
令和5年度にメンタルヘルス不調による労災支給決定件数が過去最多を更新するなど、心の健康管理は喫緊の課題となっています。特に中小規模事業場でのストレスチェック制度の普及率は低いため、今後はストレスチェックや医師面接指導の実施が全事業場で一層重視される見通しです。
3. 化学物質管理の強化
危険性や有害性の確認された物質に対する通知制度の改善や、SDS(安全データシート)の義務化などが進められています。化学物質を扱う現場では、リスクアセスメントの実施や必要な保護措置の徹底などが求められ、特に中小規模事業場にとっては管理体制の整備が大きな課題となっています。
4. 高年齢労働者への対策
令和5年度時点で、60歳以上の労働者が全体の18.7%を占める状況となっています。身体能力や反応速度など年齢に伴うリスクを踏まえた安全対策がますます重要視されており、職場環境や業務内容の見直しが求められています。
Q&A:健康障害予防対策に関する主な疑問
Q1. 中小事業場の事業主が新しい義務に対応するにはどうすればよい?
A. 個人事業者や中小規模事業場では、厚生労働省が示す指針やガイドラインを活用しながら、特別教育や労働災害防止措置を確実に実施することが求められます。専門知識を持つ産業医や労働衛生コンサルタントと連携することで、現場に即した実践的かつ効率的な対策を講じやすくなります。
Q2. ストレスチェックを未導入の場合、何から始めればよい?
A. 50人未満の事業場においてもストレスチェック制度の導入は推奨されています。まずは簡易なツールを使用して従業員の心理的負担を把握する仕組みを作ることが第一歩です。並行して、専門家への相談や助成制度の活用を検討することで、導入コストや実務面のハードルを下げることが可能になります。
Q3. 化学物質の管理に関して特に注意すべき点は?
A. SDS(安全データシート)の整備と、対象物質に対する適切なリスクアセスメントの実施がポイントです。さらに新制度で要求される通知義務や安全対策の強化に迅速に対応するため、管理体制と情報伝達の仕組みを早急に整備する必要があります。
筆者の考え
こうした成功事例は制度の有効性を示す有力な証左である一方、各事業場の事情に応じた簡易導入や負担軽減策の検討が不可欠です。実施には一定のコストや運用リソースが伴うため、導入のハードルを下げるためのサポート体制拡充が望まれます。
ポイントと次のアクション
• 中小規模事業場でも、大企業と同様に健康障害予防対策の徹底が強く求められている。
• メンタルヘルス対策や化学物質管理など、事業場規模を問わず取り組むべき喫緊の課題が増加している。
• ガイドラインや専門家の知見を最大限活用し、自社の状況に合った形で対策を推進することが重要。
参考資料・リンク一覧
• 厚生労働省「今後の労働安全衛生対策について」
発信日:2025年1月17日
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001377880.pdf
今回の記事を踏まえて、自社の労働安全衛生対策を改めて点検してみてはいかがでしょうか。中小規模事業場であっても、産業医や労働衛生コンサルタントなどの専門家を積極的に活用することで、より効率的かつ効果的な取り組みが可能になります。全ての従業員が安全かつ健康に働ける環境を整えるため、今後も継続的な対策強化が求められます。