第14次労働災害防止計画は、2023年4月から2028年3月までの5年間を計画期間として、厚生労働省が策定した中期計画です。この計画は、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めています。これまでに数回の改訂が行われており、第14次労働災害防止計画はその最新版として注目されています。
この記事は以下の方におすすめです。
・14次労働災害防止計画について理解したい人
・産業衛生に関する最新の流れを掴みたい人
この記事では、産業医面談の具体的な内容や準備方法、面談後の対応について詳しく解説し、皆さんの不安を少しでも解消するお手伝いをします。安心して面談を迎えられるよう、ご確認いただけますと幸いです。
第14次労働災害防止計画の目的と重点対策
この計画の目的は、事業場の規模、雇用形態や年齢等によらず、どのような働き方においても、労働者の安全と健康が確保されていることを前提として、多様な形態で働く一人ひとりが潜在力を十分に発揮できる社会を実現することです。
第14次労働災害防止計画の具体的な重点対策
- 自発的に安全衛生対策に取り組むための意識啓発:事業者が主体的に安全衛生対策に取り組むための意識を高めるための取り組みです。
- 労働者の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進:労働者の作業行動が労働災害の原因となることを防ぐための対策を推進します。
- 高年齢労働者の労働災害防止対策の推進:高齢化が進む中で、高年齢労働者の安全を確保するための対策を推進します。
- 多様な働き方への対応や外国人労働者等の労働災害防止対策の推進:多様な雇用形態や外国人労働者等に対する安全衛生対策を強化します。
- 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進:個人事業者等に対しても、安全衛生対策を推進します。
- 業種別の労働災害防止対策の推進:業種ごとに特有の問題を解決するための対策を推進します。
- 労働者の健康確保対策の推進:労働者が健康的に働ける環境を整備するための取り組みを推進します。
- 化学物質等による健康障害防止対策の推進:化学物質等による健康障害を防ぐための取り組みを推進します。
日本で最も多い労働災害は「転倒」です。これは、労働災害の死傷者数の約4分の1を占めています。特に50代以上の女性に多く見られます。これらの事故を防ぐためには、適切な安全対策と教育が重要である、また労働環境を整えることで、労働者が安全に働けるようにすることも大切です。こういった背景があり計画に入れられたと考えられます。
第14次労働災害防止計画の重点対策に対する具体的対策
8つの重点対策への具体的方策は下記が考えられています。
- 安全衛生対策の見える化:事業者は、安全衛生対策の取り組みを見える化する仕組みを活用し、主体的に安全衛生対策に取り組むことが求められています。
- 転倒災害対策:転倒は労働災害の主な原因であり、特に高齢の労働者に多く見られます。そのため、ハード(物理的な環境)とソフト(教育や制度)の両面から転倒災害対策に取り組むことが求められています
- 社会的評価の環境整備:事業者が安全衛生対策に取り組むことが、事業者の経営や人材確保・育成の観点からもプラスであると周知することです。これにより、社会的に評価される環境を整備し、安全衛生対策に積極的に取り組む事業者が評価されるようになります。
- 災害情報の分析強化:事業者は、災害情報を分析し、その結果を基に安全衛生対策を強化することが求められています。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進:新技術(例えばウェアラブル端末等)の有効性が厚生労働省より示された際には、その周知・啓発を行うことです。
以上のような取り組みを通じて、労働者の安全と健康を確保し、労働災害を防止するために重要です。また、この計画では「費用としての人件費から、資産としての人的投資」への変革が掲げられています。これは、労働者の安全衛生対策が事業者の経営戦略や人材確保から見ても重要であることを示しています。そのため、積極的に安全衛生対策に取り組む事業者が社会的に評価される環境を醸成し、安全と健康の確保を更に促進することが求められています。
海外の労働災害防止に向けた取り組み
他の国でも労働災害防止に向けた取り組みが行われています。例えば、欧米では自主対応型の取り組みが基本で、労働安全衛生マネジメントシステムやリスクアセスメントが具体的な現れとなっています。また、最近では安全衛生対策の対象が作業負荷という観点から作業条件や作業方法の見直しへと広がる傾向にあり、その典型例がエルゴノミクス的アプローチであるとされています。
イギリスでは、法的に元請と下請の責任が定められており、元請の方が下請よりも責任が重くなっています。また、ドイツでは、リスクアセスメントの実施が非常に重視されており、詳細な規定の遵守による安全確保ではなく、現場の実情に応じた柔軟な安全対策の選択が許容されています。
これらの取り組みは、各国の文化や法制度、産業構造などにより異なる形で展開されています。しかし、共通しているのは、すべての労働者が安全で健康的な環境で働ける社会を目指すという目標です。
まとめ
以上、第14次労働災害防止計画に関することを記事にしてみました。
第14次労働災害防止計画は、現代の労働環境の変化に応じて、労働者の安全と健康を守るための最新の方針と取り組みを示しています。これを基に、全国の労働現場での取り組みが進められることで、日本の労働環境がより良いものとなることを期待されています。
参照
(1) 労働災害防止計画について |厚生労働省
(2) 令和5年度における建設業の安全衛生対策の推進について
(3) 14次労働災害防止計画の概要
(4) 「第 14 次労働災害防止計画」が策定されました
(5) 令和4年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省
(6) 「福井労働局 14次防」 (注) のポイント
(7) 岩手労働局 第14次労働災害防止計画
(8) 欧米の安全衛生の取り組みと目本の動向 – J-STAGE
(9) 先進諸国における 建設現場の労働安全 – https://www.ejcm.or.jp/jcm/monthly/1105/pdf/1105-03.pdf.