産業医を選ぶときは、医師の経歴や月額だけでなく、契約後に「誰が」「何を」「どこまで」行い、面談後の会社措置と再評価までつながるかを確認してください。紹介会社、産業医事務所、個人の産業医にはそれぞれ利点があります。重要なのは、自社に必要な運用を契約前に見える形にすることです。
先に確認する7項目
- 担当する医師と資格
- 契約に含まれる産業医業務
- 訪問・面談・緊急相談の体制
- 面談後に会社へ返る書面
- 会社措置と再評価の追跡
- 自社課題に合う専門性
- 追加料金、交代、解約、データ返却の条件
まず「産業医の法定業務」を契約範囲に落とす
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医の選任が必要です。産業医の職務には、健康診断や面接指導の結果に基づく措置、作業環境・作業・健康の管理、健康教育や健康相談、健康障害の原因調査と再発防止などが含まれます。東京労働局は、原則として少なくとも毎月1回の職場巡視も示しています。
しかし、契約書に「産業医業務一式」とだけ書かれていても、訪問時間の中で何を優先するか、面談や意見書が別料金か、衛生委員会資料を誰が用意するかは分かりません。法令上の役割を、自社の月次運用へ分解して確認する必要があります。
紹介会社・産業医事務所・個人契約の違い
| 契約先 | 向いている場面 | 契約前に確認したい点 |
|---|---|---|
| 産業医紹介会社 | 広い地域、多数拠点、短期間で複数候補が必要 | 紹介後の運用支援、担当医の固定、交代条件、手数料と追加料金 |
| 産業医事務所・医療法人等 | 面談・意見書・記録・事務局支援をまとめて設計したい | 実際の担当医、チーム内の役割、情報管理、契約終了時のデータ返却 |
| 産業医個人 | 担当医と直接相談し、シンプルに運用できる体制が社内にある | 日程調整や記録を誰が担うか、欠勤・交代時のバックアップ |
どの形が常に優れている、ということではありません。多拠点の医師確保が最優先なら紹介会社のネットワークが合理的です。一方、面談後の書面、会社の決定、再評価まで一つの流れにしたい場合は、その運用を契約主体が担うかを確認してください。
1. 実際に担当する医師と資格
会社名やサービス名ではなく、実際に自社を担当する医師を確認します。医師免許があるだけでは産業医業務の資格要件を満たすとは限りません。資格を証する書面、産業医実務の経験、担当可能な曜日・地域、交代時の引継ぎ方法を確認してください。
- 契約前に担当医と話せるか
- 担当医が固定されるか、毎回変わるか
- 医師の交代を会社から相談できるか
- 休暇・病気・退任時の代替体制があるか
2. 月額に含まれる業務と時間
同じ「月1回訪問」でも、職場巡視だけで終わる契約と、衛生委員会、面談、意見書、健康診断の事後措置まで含む契約では内容が違います。月額の安さだけで比較せず、年間に必要な業務を並べ、含有時間と追加単価を確認します。
| 業務 | 確認する質問 |
|---|---|
| 職場巡視 | 頻度、現地対応、記録と改善確認を含むか |
| 衛生委員会 | 出席、資料作成、議事録コメントを含むか |
| 健康診断事後措置 | 判定人数、データ形式、意見聴取、面談の範囲 |
| 長時間・高ストレス面談 | 面談枠、報告書・意見書、緊急時の扱い |
| 休職・復職 | 主治医照会、復職前後の面談、再評価を含むか |
| 記録 | 保管主体、閲覧権限、契約終了時の返却方法 |
3. 訪問・面談・相談の体制
通常の定例訪問だけでなく、急な休職、復職予定日の決定、高ストレス者からの申出など、予定外の案件が起きたときの入口を確認します。受付窓口、返答の目安、オンライン面談の可否、追加費用、緊急時に対応できない場合の代替先を契約前に決めておくと運用が止まりません。
4. 面談後に会社へ何が返るか
東京都医師会の産業医向け手引きは、産業医面談を「業務と健康の適合を判断する面談」と「個人の健康管理を目的とした面談」に整理しています。会社が必要としているのは、本人への健康助言だけではなく、職場で講じる措置を判断できる医学的意見です。
- 就業可否または就業上の措置
- 措置を始める日
- 次に見直す日
- 措置を変更・解除する条件
- 会社が確認すべき職場情報
5. 意見を出した後まで追うか
意見書が発行されても、上司への共有、勤務表の変更、残業制限、再面談の予約が行われなければ健康管理は完了しません。医師側が会社の最終決定を代行することはできませんが、「会社が決めたか」「実施されたか」「再評価したか」を確認する運用は設計できます。
6. 自社課題に合う専門性
業種や働き方によって必要な専門性は異なります。製造・運輸なら有害業務、交代勤務、眠気と安全。IT・専門職なら長時間労働、メンタルヘルス、復職。持病のある従業員が多ければ治療と仕事の両立支援など、自社で起きやすい案件を具体的に伝え、担当医の経験と対応方法を確認します。
7. 総額と出口条件
月額以外に、初期費用、訪問交通費、面談、意見書、時間超過、遠隔拠点、医師交代などの料金を確認します。同時に、解約予告期間、担当医変更、記録の返却、契約終了後に残った再評価予定の扱いも確認してください。
KIDUKIが合う企業・合わない企業
合う企業:東京を中心に、睡眠・メンタル・休職復職を含む案件を、面談から書面、会社措置、再評価までつなげたい企業。
他の選択肢が合いやすい企業:全国多数拠点へ同時に医師候補を配置することが最優先の企業、または社内に十分な産業衛生事務局があり、医師の訪問時間だけを確保したい企業。
契約前の最終チェックリスト
- 担当医の氏名・資格・担当可能日時が決まっている
- 年間業務と月額内の範囲が一覧になっている
- 追加料金が発生する条件が明確である
- 面談後の報告書・意見書の様式を確認した
- 会社の決定・実施・再評価を誰が追うか決めた
- 個人情報の閲覧権限と保管・返却方法を確認した
- 担当医交代・解約時の引継ぎを確認した
参考となる公的情報
- 東京労働局「総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医のあらまし」
- 東京労働局「安全管理者・衛生管理者・産業医等の選任報告」
- 東京都医師会「産業医活動に臨むにあたって」
- 東京都医師会「産業医面談のノウハウとフィードバック方法」
KIDUKIの契約範囲は、嘱託産業医契約と既存産業医の専門補完で分けています。担当医、業務範囲、記録、再評価まで確認したうえでご提案します。