3年前に付けた深夜業の制限が、まだ残っています。本人はとうに回復していて、本人も上司も制限のことを覚えていません。人事の記録にだけ残っていて、シフトを組むときに毎回引っかかります。
誰も悪くありません。解除する仕組みが無かっただけです。
この記事では、就業制限が解除されないまま残る構造と、期限管理をどう設計するかを整理します。
制限は、付けるときと外すときで難易度が違います
付けるときには契機があります。健診結果、面接指導、復職。誰かが動き、意見書が出て、会社が決めます。
外すときには、その契機がありません。何も起きなければ、何も起きないまま続きます。
さらに、外す判断には心理的な負荷があります。付けるのは安全側の判断ですが、外すのはリスクを取る判断に見えます。誰も積極的に外そうとしません。
この2つが重なると、制限は溜まる一方になります。
溜まった制限が生む問題
- 本人の不利益。必要のない制限が、配置や評価に影響することがある
- 現場の負担。シフトや配置の制約が積み上がる
- 制限の形骸化。数が増えると一つひとつが軽く扱われ、本当に必要な制限まで守られなくなる
3つ目が最も危険です。「どうせ古い制限だろう」という扱いが定着すると、新しい制限も同じ目で見られます。
設計するのは3つだけです
1. 制限には必ず再評価の期日を入れる
「当面のあいだ」ではなく、日付を入れます。3か月後、6か月後、次回健診時。期日のない制限を作らない、というのがこの設計の全部です。
意見書に期日が書かれていない場合は、会社から産業医に確認します。産業医は意見を述べる立場なので、問われれば期日についても意見を出します。
2. 期日が来たら、必ず何かを決める
期日が来たときの選択肢は3つです。
| 解除 | 制限を外す。理由と日付を記録 |
|---|---|
| 継続 | 制限を続ける。理由と、次の再評価期日を記録 |
| 変更 | 内容を変える。理由と、次の再評価期日を記録 |
「何もしない」は選択肢に入れません。継続する場合も、継続と決めた記録を残します。これがないと、続いているのが判断の結果なのか放置の結果なのか、後から区別できません。
3. 一覧を持つ
いま何件の制限が有効で、それぞれの再評価期日がいつか。この一覧が無いと、期日管理は成立しません。
項目はこれで足ります。
- 対象者(健康情報の取扱いに従い、閲覧範囲を限定して管理)
- 制限の内容
- 開始日
- 再評価期日
- 直近の判断(解除/継続/変更)とその日付
当事務所の継続契約では、この追跡を自社開発のCasetraで扱っています。ただし表計算ソフト1枚でも成立します。大事なのは道具ではなく、期日が来たときに誰かが必ず見る、という運用です。
棚卸しから始める
いま溜まっている分は、期日管理を始めても自動的には消えません。一度、棚卸しが要ります。
手順は単純です。
- 有効な就業制限をすべて洗い出す
- それぞれについて、開始日と根拠となった意見書を確認する
- 根拠が確認できないものと、明らかに古いものを、産業医面談の対象にする
- 面談を経て、解除/継続/変更を決める
- 以降は再評価期日つきで管理する
3の段階で「根拠が見つからない制限」が出てくることがあります。それは記録の問題であって、本人の状態の問題ではありません。その前提で、あらためて評価します。
誰が決めるのか
解除も継続も、決めるのは会社です。産業医は、本人の状態と業務内容に照らして医学的な見地から意見を述べます。
そして解除の判断も、記録として残す対象です。「なぜ外してよいと判断したか」が残っていれば、後から問われても説明できます。
次にやること
いま有効な就業制限を数えてください。数がすぐに出てこない、あるいは一覧が存在しないのであれば、棚卸しの段階にあります。
一覧があるなら、再評価期日の欄が埋まっているかを確認してください。空欄が多ければ、そこから始めます。
出典
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」 第66条の5、第66条の8、第104条
本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。