睡眠の問題が見つかりました。面談で本人が眠れていないと話した、あるいはスクリーニングで疑いが出た。
ここから先で止まる会社が多くあります。見つけたはいいが、それを就業上の何に変えればよいのか。
この記事では、睡眠の所見を就業上の配慮に落とすまでの手順を整理します。見つけることと、決めることは別の作業です。
所見はそのままでは措置になりません
「睡眠時間が5時間」という所見だけでは、会社は何も決められません。5時間で問題なく働ける人もいれば、そうでない人もいます。
就業上の判断に必要なのは、所見と業務を突き合わせた結果です。
| 所見 | 睡眠時間、睡眠休養感、日中の眠気、服薬、疾患の疑い |
|---|---|
| 業務 | 運転・高所・機械操作の有無、勤務時間、交代勤務、単独作業か |
| 判断 | この所見で、この業務に、この条件で就けるか |
同じ所見でも、業務が違えば判断は変わります。デスクワークの人と長距離運転の人では、必要な措置がまったく違います。
手順は4段階です
1. 所見を確認する
睡眠時間だけでなく、休養がとれている感覚があるか、日中に強い眠気があるか、服薬の影響があるか。量と質の両方を見ます。
2. 業務の危険性を確認する
一瞬の意識の途切れが事故になる業務かどうか。運転、高所、機械操作、単独での危険作業。ここに当たる場合、判断は保守側に寄ります。
3. 産業医が意見を述べる
就業区分(通常勤務/就業制限/要休業)、必要な配慮の内容、そして再評価の時期。3つめを必ず含めます。
疾患が疑われる場合は、受診の必要性についても意見を述べます。ただし診断は医療機関が行い、受診先はご本人が選びます。産業医が特定の医療機関を指定することはありません。
4. 会社が決めて、実施する
措置の内容を決め、職場で実施するのは会社です。意見のとおりにできない事情がある場合は、代わりに何をするかを決め、その理由とともに記録します。
配慮の中身は、多くの場合シフトの側にあります
睡眠の問題に対する就業上の配慮というと、時間外労働の制限を思い浮かべがちです。しかし交代勤務のある職場では、勤務表の組み替えの方が効くことがあります。
- 終業から次の始業までの間隔を確保する
- 連続夜勤の回数を制限する
- 夜勤明けの翌日に日勤を入れない
これらは夜勤・交代勤務の睡眠対策で扱った項目で、個人の健康情報を見なくても勤務表だけで確認できます。個人への配慮としてではなく、職場の設計として実施できるという利点があります。
特定の人だけに配慮を付けると、その人が特別扱いされていることが周囲に伝わります。勤務表そのものを直せば、その問題が起きません。
健康情報の伝え方
上司に伝えるのは、業務上必要な範囲に限ります。「深夜業を避ける必要がある」で足りるなら、その理由となる疾患名や検査結果までは伝えません。
睡眠に関する情報は、生活の状況と結びつくため、本人にとって話しにくい内容を含みます。誰に何が伝わるかを先に本人へ示すことで、次の面談で話してもらえるかどうかが変わります。
記録に残すこと
- 所見の内容と、確認した日付
- 業務内容との突き合わせの結果
- 産業医の意見
- 会社が決めた措置と、決定した日付
- 意見と異なる決定をした場合は、その理由
- 再評価の予定時期
最後の項目が、次の記事につながります。配慮は始めたら終わりではなく、いつか外すものだからです。
次にやること
直近で睡眠の所見が見つかった案件について、上の6項目が揃っているかを確認してください。所見は記録されているが、業務との突き合わせが残っていない、というのがよくある形です。
突き合わせの記録がないと、なぜその措置にしたのかを後から説明できません。
措置を決めて実施するのは会社です。産業医は、所見と業務の関係について医学的な見地から意見を述べ、判断の材料を整えます。
出典
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
睡眠ガイド2023(PDF) - 労働安全衛生法第66条の5(健康診断実施後の措置)、第104条(心身の状態に関する情報の取扱い)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。診断と治療は医療機関が行います。