健康経営度調査の記入時期になると、毎年同じところで手が止まります。睡眠の設問に、何を書けば「取り組んでいる」と評価されるのか。
セミナーを1回開いた、という記載はできます。ただそれが評価につながるかは別の話で、翌年また同じ迷いが来ます。
この記事では、調査票に書ける形で睡眠施策を設計するとはどういうことかを整理します。実施の記録まで含めて設計する、というのがこの記事の要点です。
睡眠は、いま位置づけが上がっている領域です
健康経営度調査には、すでに睡眠に関する設問が置かれています。経済産業省が公表している記入例にも睡眠をテーマにしたセミナーが挙げられており、睡眠は「書いてよい取り組み」ではなく「聞かれている取り組み」になっています。
調査票の設問や評価基準は年度ごとに更新されます。前年の設問を前提にせず、回答する年度の調査票と手引きを確認しながら、実施内容と記録を対応づける必要があります。
加えて厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は職場管理者を対象読者に含めており、施策の根拠として引用できる公的文書があります。根拠を示せる施策は、評価する側にとっても読みやすいという利点があります。
評価されにくい書き方と、されやすい書き方
同じ「睡眠セミナーを実施」でも、記録の有無で意味が変わります。
| 評価されにくい | 睡眠に関するセミナーを実施した |
|---|---|
| 評価されやすい | 対象と課題を定めて実施し、実施報告書を残し、次の施策に反映した |
差は熱意ではありません。後から確認できる形になっているかどうかです。
設計するときの4点
1. 誰に向けた施策か
全社一律の啓発か、交代勤務者向けか、運転業務者向けか。対象を絞ると内容が具体的になり、効果も測りやすくなります。全社一律は書きやすい代わりに、次の年に「で、何が変わったのか」と問われたときに答えにくくなります。
2. 何を根拠にした内容か
睡眠ガイド2023など公的文書に沿った内容であれば、その旨を記載できます。逆に、出所の不明な健康情報を配ると、後から説明できません。
3. 実施の記録をどう残すか
実施日、対象者数、参加者数、内容、使用資料、質疑で出た論点。実施報告書を最初から成果物として設計しておくと、調査票の記入時に探し物をせずに済みます。
4. 次に何をするか
セミナー後のアンケート、衛生委員会での共有、勤務表の見直しへの反映。単発で終わらせず次につなげた記録があると、継続的な取り組みとして書けます。
研修だけが施策ではありません
睡眠施策というと研修を思い浮かべがちですが、勤務表の見直しの方が効果が大きい場合があります。
交代勤務のある職場なら、勤務間インターバル、連続夜勤回数、一勤務の長さ。これらは夜勤・交代勤務の睡眠対策で扱ったとおり、勤務表の提出だけで確認できます。そして改善したことを記録に残せます。
研修は「知識を配った」記録になりますが、勤務表の是正は「環境を変えた」記録になります。調査票で問われている「適切な働き方の実現に向けた取り組み」にも接続します。
健康情報の扱いに注意する
施策の効果を測るために集める個人の睡眠時間や検査結果は健康情報となり、内容によっては要配慮個人情報に当たります。誰が見るのか、どこに保管するのか、人事評価に使わないことをどう担保するのかを先に決めます。
調査票のために個人データを集める必要は、多くの場合ありません。実施の記録と、集計値で足ります。
次にやること
昨年の調査票で、睡眠の設問に何と書いたかを確認してください。そのとき手元にどんな記録があったか、無かったか。
記録が無かったのであれば、今年は「実施報告書を作る」ところから設計します。施策の内容より先に、記録の形を決める方が結果的に早く進みます。
何を実施するかを決めるのは会社です。産業医は、内容の医学的な妥当性と、職場の状況に照らした優先順位について意見を述べます。
出典
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
睡眠ガイド2023(PDF) - 経済産業省「健康経営度調査」検討会資料(設問構成は年度ごとに更新)
令和7年度健康経営度調査に関する検討会
本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。健康経営度調査の評価基準は年度により変わります。