「復職可能」と書かれた診断書が届きました。日付も入っています。人事としては、これで復職日を決めてよいのか判断がつきません。

主治医の診断書を疑っているわけではありません。診断書が答えている問いと、会社が決めなければならない問いが、そもそも別だからです。

この記事では、復職の判断で睡眠を確認する理由と、確認して何を決めるのかを整理します。

診断書が答えていること、いないこと

主治医の診断書は、治療の見立てです。症状が落ち着いてきた、日常生活が送れている、就労可能と考えられる。これは医学的に妥当な判断です。

一方、会社が決めるのは「この人が、この職場の、この業務に、この勤務条件で戻れるか」です。ここには職場の情報が要ります。担当業務の内容、勤務時間、交代勤務の有無、通勤時間、繁忙期。主治医は通常これらを知りません。

診断書に睡眠や生活リズムのことが書かれていないのは、不備ではありません。問いが違うのです。その差を埋めるのが産業医の役割です。

なぜ睡眠を見るのか

メンタル不調で休職した人の場合、睡眠は回復の指標として扱いやすい特徴があります。

  • 本人が答えやすい。気分の変化より、就床・起床の時刻の方が具体的に答えられる
  • 生活リズムが見える。休職中は自由な時間割で過ごせるが、復職後は決まった時刻に起きる必要がある
  • 再発の予兆になりやすい。調子が崩れる前に、まず眠りが崩れることが多い

眠りが戻らないまま復職日だけが決まると、復職後の早い段階で勤務を続けにくくなることがあります。再休職を避けるためにも、復職前の準備と復職後の再評価を一つの計画として設計します。

復職前に確認すること

1. 起床時刻が、出勤に間に合う時刻で安定しているか

復職の2〜4週間前から、実際に出勤する時刻に起きられているか。休職中に昼夜が逆転したままだと、復職初日から負荷がかかります。

ここは本人の努力の問題として扱わず、準備の期間として確保するものです。復職日を決める前に、この期間を織り込んでおきます。

2. 日中の活動が保てているか

起きられていても、日中に横になる時間が長ければ、勤務時間を通しての就業は難しい可能性があります。図書館やカフェで一定時間過ごす、といった形で確認する方法があります。

3. 服薬の影響

睡眠を助ける薬を服用している場合、翌朝への持ち越しがあるかを確認します。運転や機械操作を伴う業務では、この点が就業上の判断に直接関わります。

服薬の内容や変更は主治医の領域です。産業医が確認するのは、業務との関係で就業上の配慮が必要かどうかです。

4. 業務内容との突き合わせ

戻る先が交代勤務なら、生活リズムは再び崩れます。長時間の運転があるなら、眠気は事故に直結します。同じ回復状態でも、戻る業務によって判断は変わります。

厚生労働省の手引きとの関係

職場復帰支援については、厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しています(平成16年策定、令和2年改訂)。5つのステップで構成され、第3ステップが産業医の中核的な関与にあたります。

この記事で述べている睡眠の確認は、第3ステップで行う職場復帰の可否判断の材料のひとつです。手引きの枠組みを置き換えるものではありません。

決めるのは会社です

産業医が行うのは、復職の可否、勤務条件、再評価の時期について意見を述べることです。復職日を決め、勤務条件を適用し、職場で実施するのは会社です。

そして意見書には、必ず再評価の時期を入れます。復職直後の配慮は、いつか解除されるべきものです。解除の契機を書いておかないと、配慮がそのまま既定になるか、誰も見直さないまま消えます。

次にやること

診断書を受け取ったら、復職日を決める前に次を確認してください。

  • 戻る先の業務内容と勤務条件が、休職前と同じか
  • 起床時刻が、出勤に間に合う時刻で安定しているか
  • 本人の同意を得たうえで、主治医に確認すべき事項があるか

3つ目は、本人の同意なしには行えません。何を、何のために聞くのかを本人に示したうえで進めます。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。診断と治療は医療機関が行います。主治医への情報提供の依頼は、ご本人の同意を得たうえで行います。