交代勤務の職場で、同じ人の面談が何度も回ってくる。眠れていない、日中がつらい、気分が落ちている。産業医面談を設定し、生活習慣の助言をして、次の面談でまた同じ話を聞く。

面談の質の問題ではないことがあります。勤務表がそのままなら、同じことが起きます。

この記事では、交代勤務の職場で最初に見るべき勤務表上の4点を、根拠の強さを明示しながら整理します。数字を断定できる項目と、できない項目があります。そこを混ぜないことが実務では重要です。

なぜ面談より先に勤務表なのか

交代勤務による概日リズムの乱れは、不眠、眠気、心身の不調と関連します。勤務側の要因が残ったままでは、個人面談と生活習慣の助言だけで改善しにくいことがあります。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、職場管理者を対象読者に含めています。個人の心がけではなく、職場の設計として睡眠を扱うという立場が公的文書で示されている、ということです。

勤務表だけで確認できる4点

以下は勤務表の提出だけで確認できます。現場に立ち入る必要も、個人の健康情報を見る必要もありません。

表の区分は、法令上の適否や医学的な合否を示す基準ではありません。勤務表をレビューするときの確認順序を示したもので、業種、業務負荷、通勤、本人の状態を含めて個別に判断します。

1. 勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息)

確認しやすい状態 全勤務で11時間以上が確保されている
見直し候補 11時間未満が月に数回発生する
優先確認 11時間未満が常態、または9時間未満が発生している

国際的な専門家合意は11時間以上の間隔を推奨しています。加えて睡眠ガイド2023は、日本の労働者調査としてインターバルが12時間未満の者は、睡眠休養感の欠如、疲労感の増加、ストレスをより感じていると記載しています。海外の数字ではなく日本人のデータがある項目なので、社内の説明で通りやすい論点です。

勤務間インターバル制度の導入は、労働時間等設定改善法上の事業主の努力義務です。自社の勤務実態を確認し、休息時間の確保を検討した記録は、働き方と健康の両面を説明する材料になります。

2. 連続夜勤回数

確認しやすい状態 連続3回以下に制限されている
見直し候補 連続4〜5回が発生する
優先確認 連続6回以上、または上限の定めがない

専門家合意は傷害リスク低減の観点から3連続以下を推奨しています。ただしこの推奨は、根拠となる文献が限られていることが原文に明記されています。「3回まで」という線には一定の根拠がありますが、4回で急に危険になるという意味ではありません。

それでも線を引く価値はあります。「何連続までなら許容か」は現場が最も判断に迷う点で、根拠を示したうえで基準を決められること自体が、シフトを組む人の助けになります。

3. 一勤務の長さ

確認しやすい状態 9時間以下
見直し候補 9時間超〜12時間
優先確認 12時間超が常態化している

ここも日本人データがあります。睡眠ガイド2023は、1日の労働時間7〜9時間を基準にしたとき、睡眠6時間未満になるリスクが、男性で9時間以上は2.76倍、11時間以上は8.62倍、女性でそれぞれ2.71倍・5.59倍と報告しています。

労働時間と睡眠時間の関係が数値で示されている数少ない項目です。長時間労働対策と睡眠対策を同じ根拠で語れるので、既存の労務管理の枠組みに接続しやすくなります。

4. 交代の方向と、夜勤明けの回復

確認しやすい状態 正循環(日勤→準夜→深夜)を基本とし、夜勤明けの後に休息日が置かれている
見直し候補 逆循環が混在する、または夜勤明け後の休息が1日のみ
優先確認 夜勤明けの翌日に日勤が入る運用がある

この項目には、確立した閾値がありません。交代の方向も回復に必要な日数も、上の3項目に比べて推奨の一致度が低いのが現状です。

ですから「何日空ければ十分」という断定はしません。この項目は日数の断定ではなく、勤務表上の不整合を確認する材料として扱います。とくに夜勤明けの翌日に日勤が入る運用は、1の短い勤務間インターバルとしても確認が必要です。

実務では、ここが最も高い頻度で見つかります。そして勤務表の組み替えだけで解消できる場合が多く、費用をかけずに改善を示せる項目でもあります。

根拠が弱いところを、弱いと書く

4項目のうち、日本人データで裏づけられるのは1と3、専門家合意にとどまるのが2、確立した閾値がないのが4です。

この差を潰して一律の点数にすると、報告書は読みやすくなりますが、後から「その基準はどこから来たのか」と問われたときに答えにくくなります。根拠、確認結果、会社が検討した対応を分けて記録することが重要です。

そのため当事務所では、判定基準を発明しないこと、合計点を作らないこと、根拠の強さを項目ごとに表示することを原則にしています。

次にやること

勤務表の提出だけで、上の4項目は確認できます。個人の健康情報は不要です。まず現状がどこに当たるかを把握し、そのうえで是正の優先順位を決めます。

是正の内容を決め、実施するのは会社です。産業医は、勤務表と睡眠・安全の関係について医学的な見地から意見を述べ、判断の材料を整えます。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。診断と治療は医療機関が行います。