一般の労働者について、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人へ面接指導の案内を出します。本人の申出を受けて面談し、記録を残し、事業者への意見を提出します。手続きとしては完結しています。

それでも翌月、同じ人が同じ時間数で上がってきます。

この記事では、長時間労働者の面接指導を形式で終わらせないために、睡眠時間を軸に据えて何を確認するかを整理します。労働時間と睡眠時間の関係には、日本人のデータがあります。

労働時間から睡眠時間を推し量る

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、1日の労働時間7〜9時間を基準にしたとき、睡眠6時間未満になるリスクが、男性で9時間以上は2.76倍、11時間以上は8.62倍、女性でそれぞれ2.71倍・5.59倍と報告しています。

この数字が実務で効くのは、勤怠データから睡眠リスクの当たりをつけられるからです。面談の前に、その人がどの程度の睡眠不足に置かれている可能性が高いかを推定できます。

面談で「眠れていますか」と尋ねると、多くの人は「まあ、なんとか」と答えます。先に労働時間から見当をつけておくと、質問の粒度を上げられます。

面談で確認する4点

1. 実際の睡眠時間

就床時刻と起床時刻を、平日と休日の両方で聞きます。休日に大幅に長く眠っている場合、平日の睡眠が足りていない可能性があります。

2. 睡眠休養感

睡眠ガイド2023は、時間の長さだけでなく休養がとれた感覚を指標として重視しています。時間は確保できていても休養感が乏しい場合、量ではなく質の問題があります。

3. 通勤を含めた拘束時間

終業から次の始業までの間隔に通勤時間が含まれていない場合、実際に眠れる時間はさらに短くなります。長時間通勤と長時間労働が重なると、睡眠時間は急速に削られます。

4. 業務の内容とリスク

同じ睡眠時間でも、運転や高所作業を伴う業務と、そうでない業務では就業上の判断が変わります。睡眠不足そのものより、睡眠不足と業務の組み合わせを見ます。

意見書に何を書くか

面接指導のあと、産業医は事業者に意見を述べます。ここで書く内容は3つに分かれます。

  • 就業区分(通常勤務/就業制限/要休業)
  • 就業上の配慮(時間外労働の制限、深夜業の回数、特定業務の可否など)
  • 再評価の時期

3つ目が抜けている意見書をよく見ます。再評価の時期が書かれていないと、配慮を解除する契機がなくなります。結果として、必要のなくなった制限が残るか、逆に誰も見直さないまま自然消滅します。

意見を述べるのは産業医、決めて実施するのは会社です。この区別は意見書の文面にも表れている必要があります。

申出がない人をどうするか

この記事で中心に扱う一般の労働者に対する面接指導は、本人の申出が起点です。申出がなければ、この枠組みによる面接指導は行われません。

ただし、時間外・休日労働が月80時間を超えた労働者の情報は、事業者から産業医へ提供することとされています。申出がなくても、産業医は誰が該当したかを知っているという状態です。

ここで会社ができるのは、申出しやすい案内の仕方を整えること、そして申出がない人についても衛生委員会などで傾向を共有することです。個人を特定せずに、部署や業務別の分布として扱えば、体制の議論ができます。

新たな技術・商品等の研究開発業務、高度プロフェッショナル制度の対象者などには、別の面接指導・健康確保措置があります。対象制度によって要件が異なるため、実務では自社の労働者区分と最新の法令・行政資料を確認してください。

次にやること

直近3か月で月80時間を超えた人のリストを、部署別・業務別に並べてください。同じ人が繰り返し出ているか、特定の部署に偏っているか。

繰り返しと偏りがあれば、それは個人の働き方ではなく業務量の配分の問題です。面接指導で個別に対応し続けるより、配分を変える方が早い場合があります。

配分を決めるのは会社です。産業医は、労働時間・睡眠・業務内容の関係について医学的な見地から意見を述べ、判断の材料を整えます。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の事業場に対する産業医の意見ではありません。診断と治療は医療機関が行います。